受験勉強法学 Examics

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■勉強法コラム

過去問の傾向分析



要約

 「出題形式」、「出題範囲」、「出題傾向・頻出分野」、「問題難易度」、「合格最低点」を分析するために、1年分解いてから『赤本』等の傾向や対策を読み込んでいく。日頃の勉強はその傾向や対策を意識して勉強を進めていく。9月からは1週間に1年分位のペースで過去問を解いて行き、分析したことを日々の学習にフィードバックさせながら勉強を行う。12月頃からの過去問演習は、時間内にどのような順番で問題を解くべきかといった実践的な作戦を考えながら解いていき、総復習とともに志望校で合格点を取れるように勉強を仕上げていく。


 
 志望校を決定したら、合格するためには志望校の入試問題が解けるようにならなければならない。つまり志望校の入試問題の対策を行う。そのために過去問を解くのである。志望校の入試問題に対応できる学力を身に着けることが合格への最短の道であるからだ。そこで、過去問の使い方について述べる。過去問を受験勉強にどのように活かすかを学んで日々の勉強に役立ててもらいたい。

 志望校を決定した後に早速過去問を入手する。一般的なのは『赤本』であるが、難関大学いついては駿台文庫の『青本』の方が解答が優れて信頼性が高いのでそちらを購入する。たとえ4月であっても過去問を入手して志望校の入試問題を分析する。それでは以下で過去問を用いた入試問題の分析方法を説明する。

 過去問を手に入れたら、最初に1年分の問題を受験科目全てにわたって解く。この時、時間を計るが時間を超過しても構わず、分からない問題についても解答・解説をカンニングしつつでよいので、とにかく問題を解いてみる。解き終えたら時間を確認して、答え合わせをして難易度や時間の厳しさ等を体感する。おそらく時間は全く足りず、自力で解けた問題もほとんどないだろう。入試本番ではどの程度の問題を時間内に自力でどれだけ解ける必要があるかを体感するのが目的だから出来不出来はきにしなくてよい。『赤本』等の解いた年度の科目毎の傾向や対策を読み込む。実際に問題を解いたため、傾向や対策の解説が述べていることが理解できるだろう。

 解いた問題の年度の傾向や対策の記述を読み込んだ後は、問題を解かなくてよいので収録されている年度の傾向や対策を読み込んでいく。この時、「出題形式」、「出題範囲」、「出題傾向・頻出分野」、「問題難易度」、「合格最低点」に注目して分析していく。

 「出題形式」については、大きな形式、つまり解答の形式は、客観式(マーク式)なのか、記述式なのか、両方の出題割合はどうなっているのか等を押える。小さな形式、つまり設問の形式がどうなっているかも押える。設問の形式については教科毎に多様であるから一概に述べることはできない。例えば英語ならば、要約問題があるか、英作文はあるか、あるなら自由英作なのか和文英訳なのか、内容一致はあるか等、設問形式を分析する。この設問形式の分析を行うことで、日々の学習で参考書や問題集でどのようなことに力点を置いて勉強するべきかが分かる。

 「出題範囲」については、そのままの意味で、どこからどこまで出題されるかである。一般的に言えば入試問題は高校の教育内容全てが出題範囲となるが、大学によって全く出題されない分野もある。受験要綱で「出題範囲」を必ず確認する。また、受験要綱に記載されていなくても暗黙の了解の如く出題されない分野があったりする。仮にそうした未出題分野があることを確認しておけば、日々の学習ではその分野を省く等して勉強時間を節約することできる。ただし、暗黙の了解は大学側が破って出題して来たとしても文句は言えないので、余裕があるのならしっかりと勉強しておくことをすすめる。

 「出題傾向・頻出分野」については、「出題範囲」と重なる所もあるが、大学毎に、又は学部毎に、出題される分野に特徴がある。良く出題される分野、または「出題範囲」でも述べたが全く出題されない分野、出題はされるがごく僅か等といった頻出分野や出題傾向を分析する。また、下で説明する「問題難易度」にも関係するが、暗記で対応できる問題が多いのか思考力を要求される問題が多いのか等の傾向もしっかりと分析しておく。「出題傾向・頻出分野」を分析すれば、必ず習得しておかなければならない分野、優先的に解けるようにならなければならない分野といったことを意識しながら日々の勉強を行える。苦手科目であったとしても、頻出分野だけは得点できるようにする等メリハリをつけた勉強を行うことができるし、暗記量が勝負でないならば問題を読み取って考える勉強を増やす等の対応もできる。

 「問題難易度」については、個別の問題の難易度と問題全体の難易度を各教科で分析する。個別の問題の難易度については、大問・小問の難易度がどうなのかを1問1問分析していく。問題全体の難易度については、簡単な問題でも膨大な量になると高速で問題を処理していく必要があり結果として難しくなったりするので、そうした問題全体を時間内で解く上での難易度等を分析する。また、たとえば難関大学といっても、全ての科目が難しいわけでなく科目毎に難易度が異なったりするのでそうした点も押える。難易度を分析することでどの科目に力を入れて勉強するかを決めることができる。例えば、自分は英語は得意であり志望大学の英語の問題は比較的平易だからある程度は差をつけることができるが、圧倒的に差をつけることはできないので、志望大学の若干難しいと一般に言われる数学の問題を解けるように苦手な数学の学力を底上げする必要がある、といった日常の勉強で重点を置く科目を選ぶことができるようになる。

 「合格最低点」は、公表されていない大学もあるが、毎年何点・何割位をとれば志望校に合格できるかを分析する。そこから上で分析して来たことを考慮して、自分の得意科目や苦手科目で何点ずつとって合格最低点以上を取るように計画する。それによって、毎日の勉強で具体的に何をすればよいかが分かってくるはずだ。
 ただし、合格最低点付近で滑り込むような合格を勝ち取り方を前提に得点計画を立てることは余りすすめない。確かに最初から合格最低点で滑り込むように計画して合格最低点を取るのがやっとの勉強を行って志望校に合格する者はいるが、そう計画した者の8割方は落ちる。入試本番では緊張したりするもので実力を完璧に出し切ることは難しく、合格最低点をある程度上回ることができるように勉強をするようにするべきだ。

 以上のことを過去問を1年分解いて毎年の傾向や対策を読んで分析したら、基礎的な知識を揃えることができる9月頃から1週間に1年分、科目数が多い場合は2週間で1年分位のペースで過去問を解いて問題の分析を行うようにする。その時は、時間内に解くためには問題をどの順番に解いていくのがよいか等と試行錯誤しながら解き、傾向や対策で分析した問題を実際に解いてみて、日々の学習でどのような勉強をより行うべきかをフィードバックさせる()。

 過去問を9月頃から解くことについて異論がある者もいよう。過去問は直前期の腕試や実践演習として残しておくべきだという考え方もある。そのような使用方法も確かにある。過去問の収録年数が少ない中堅大学についてはそれでもよいだろう。中堅大学を志望する者は、過去問を解くよりも基礎的な知識を習得する勉強を優先させるべきだということもあるからだ。
 ただ、10年分は入手できる難関大学については、過去問を早い時期から解き進めて、傾向を分析しながら最終的に必要な学力を意識しながら勉強を進める方がよい。それに難関大学は大学別模試も大手予備校が実施しているので腕試や実践演習はそちらで代替できる。また、問題集には難関大学で出題された問題が収録されていることが多々あり解答を覚える程にやり込んでいるものもあるので、初見の問題に対して時間を計りながら解くという実践演習もどれだけできるものなのか疑問でもある。
 9月から過去問を解くのは、あくまで過去問分析のためであるから解けるようになる必要も未だなく、問題集の様に覚え込む程は未だやらなくてよい。以上の理由から、収録年数が少ない大学についてはち直前期まで過去問を残しておくのもよいが、基本的には過去問を解きながら分析していくことをすすめる。

 9月から実際に問題を解いて過去問の分析をしつつ勉強を進めて行くが、全科目について一通り勉強を終える11月後半から12月頃からは今まで勉強してき事項の総復習を行うのと並行して入試実践力を養成するための過去問演習に入る。時間を計りながら過去問を解き、自分の中で効率よく解くことができる順序を確立していく。一度解いたことがある問題なので、時間内に解くことができるだろうし、正答率も相当高いだろうが、油断してはならない。明らかな難問は別としても、解いた問題は必ず解けるように復習する。今までの分析で「出題傾向・頻出分野」等もある程度は分かっているはずなので、2度目の過去問を解く際にはより具体的にどこが狙われやすいか等を分析しつつ、逆にそろそろ狙われ得るかもしれない分野を予想しながら総復習の勉強に組み込んでいく。

 志望大学の入試問題の傾向や対策の分析の方法から、入試問題をどう解きどのような勉強を行うべきかまで、過去問から学べることを述べてきた。過去問をただの腕試で終わらせることなく、志望校合格のためにどのように活用するかが分かってもらえただろう。過去問から志望校に特化した勉強ばかりしていると志望校が出題傾向を変えて来たときに対応できなくなるし、大学で学問を学ぶ上で受験技法に拘った知識は望ましくなく、余り過去問から何大学の勉強法といったものは論じるべきでないと私は考えているが、このようにして過去問から志望大学に対応した勉強を行うようにできる。


 フィードバックさせる時に、「情報の一元化」で述べたような1冊の参考書に情報を一元化していく勉強方法を採用している者については、一元化する媒体の問題に出題された事項の余白に「何年度」と書き込み出題された年度が分かるようにして、下線を引いたり、解法のポイント等を書き込むとよい。日常の学習で出題分野がどこに集中しており、どのように問われるか等を確認しながら復習することができる。
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